「食い倒れの新開地 着倒れの水道筋」
数年前、灘の古老に聞いた言葉です。
「新開地の人は芝居や外食に金をかけ、水道筋の人(=灘中の手住民)は食べ物は
始末してその分エエべべ着てる」てことらしい。
(本当はもう少し強烈な皮肉があったのですが)
そう言われれば、水道筋かいわいには呉服屋や洗い張りの店が多いし、
小さいころ「水道筋ディナー」ってあんまりした覚えがない。
「お外でごちそう」的な店は少なかったかもしれない。
食べ物を始末する=外食をしないってことなのでしょう。
やはり市場で食材を買い物をして家でつくるという、家食文化の街なのかもしれません。
なんせおいしい素材がごろごろしているワンダーランドがあるのですから。
いつものように市場へ買い出し。
少し肌寒かったのでなんとなく小鍋っぽいものでもすっか、
なんて考えながらウロウロしていると「魚辰」の大将、
「鮪の鍋、どう?」
あ〜いいですね。
濃いめの出汁でねぎま鍋なんて酒が進んでしょうがないっす。
なにやら奥の冷蔵庫からドカンと出てきました。
「氷見のマグロや。うまいで!」
氷見マグロ。
氷見と言えばアータ、寒ブリで有名な富山の漁港。
マグロもなかなか絶品でございまして。
なんせ氷見から北上し、青森あたりで穫れるマグロがあの高級ブランド「大間マグロ」
らしいのですから。
もちろん本マグロなんですが、今回いただいたのは頭、あばら、そしてテール肉。
つまりサクをとった後のあら肉です。
なのでフトコロにもうれしい。
「いちばんよお動いとおとこやからおいしいで。DHAもたっぷりやで」
そうでしょうそうでしょう、しかもブランドもんの本マグロっすからね。
スーパーにある、よーわからんマグロのアラとは訳が違う。
スーパーのはアラじゃなくて「マグロのアレ?」ですね。
アレ?これってマグロ???ホントに???
あるいは「マグロのアララ」って感じかも。
やったら赤いけど亜硝酸塩まみれ?アララ…。
市場のは「アレ?」でも「アララ…」でもない真っ当な「アラ」
「1000円分くらい入れとこか」
と入れてもらったマグロ、マグロ、マグロ。
てか、むっちゃ量あるんですけど!
「あまったら焼肉のタレにつけてジンギスカン風にしてもおいしいで。
野菜といっしょにワシワシと。昨日ウチはそないして食べてん」
ひ、氷見マグロのジンギスカンっすか!
本マグロを野菜といっしょにワシワシっすか!
贅沢っすね〜。
矢崎滋あたりが「まるっ!」て叫びそうなレシピです。
ま、そんなこんなで、
甘辛のすき焼き風割下で「ねぎ[氷見]ま鍋」をつくってみました。
あわせる野菜は白葱ではなく、やはり旬の淡路の新玉ねぎに。
もちろん市場もの。
この玉ねぎが甘いのなんの。
鮪といっしょに生玉子につけていただきます。
脂っこくなく身が締まって旨さが凝縮してる感じ。
なんだろ?
田淵じゃなくて、金本って感じ?
ちょっと違うかもしれませんが、旨いですよこれは。
そして、仕上げはうどんでも雑炊でもなく「ちょこっと汁かけごはん」に。
そ、いっぱいかけたら駄目なんです。スプーン1杯くらいの旨味が凝縮した
甘辛出汁をちょこっと。
これ、寿司源(水道筋5)のオネエサンに教えてもらった食べ方です。
至福。
ジンギスカン風は「昌原商店」(灘中央市場)の自家製焼肉のたれにつけ込んで
フライパンで焼いて、レタスにトッピング。
バカウマ。
至福2。
灘中の手の人たちが外食しない理由。
なんとなくわかるような気がします。


