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2008年8月30日(土曜日)

底抜け!痛快!!船成金の館(54)

カテゴリー: - dr-franky @ 14時41分21秒

 大桟橋に近い岸壁に、ランチは接岸した。
 石橋市長、滝川会頭、銀次郎は、ひとまず神奈川県庁を目指した。
 栄華を誇った通りは、瓦礫の山か、あるいは余燼のくすぶる焼け棒杭の
広がる焦土と化していた。その中に、倒壊を免れた横浜正金銀行や、開港
記念館の時計塔が屹立していた。

 明治建築界の巨魁・片山東熊の手がけた・仏蘭西式の赤煉瓦の殿堂も、
大きな被害を受けていた。
 安河内知事が臨時の天幕で一行を出迎えた。

 「このたびの甚大なる災害、謹んでお見舞い申し上げます」。
 石橋市長が言葉をかけた。
 「いち早く救援に駆けつけていただき、かたじけない。」
 「この後にも、救援船が参ります。」
 「しかしながら、市中もこのような有様で、荷役を行う沖仲士も集まら
ない状況です。しかし、多少の時間が必要だが、県としてなんとしてでも
手当てして、神戸の篤志を県民へ渡せるよう努力いたしましょう」。
 
 横浜市役所へも出向いて、渡辺市長と面会した一行は、上海丸の物資陸
揚げの都合も考えて、一路、徒歩で東京へ向かうこととなった。
  
 かつての東海道の道筋を、一行は進んだ。マッチ箱のようにへしゃげた
かつての町並みのなかに、かろうじて建っている家が見える。
 行く道に、銃剣を装備した歩兵が警戒しているのに、一行はたびたび遭
遇した。「何でも暴動のうわさがあるそうです」。市長秘書が銀次郎に耳
打ちした。

 上陸してから、半日以上経ったが、このような非常時に食事にありつけ
る場所などありえるはずもなかった。
 だが、市長秘書がどこからか、炊き出しのうどんを一杯調達してきた。
 だが銀次郎は、「わしはよいから、市長と滝川君とで分けてください」
と頑なに断る。
 「道中は長いですから、せめて一口だけでも」、と石橋市長が薦めても
「なに、私も若い時分は、すきっ腹抱えてどれだけ過ごしたこととか。平
気ですよ。」と譲らない。

 結局、この後にも、握り飯が手に入ったが、銀次郎は市長と儀作に譲っ
て、結局、東京を出るまで、食事らしい食事を取ることはなかった。
                         (この項つづく)

 
 関東大震災 関内の惨状


2008年8月25日(月曜日)

底抜け!痛快!!船成金の館(53)

カテゴリー: - dr-franky @ 00時08分23秒

 被災地を思う銀次郎たちの重々しい空気とは対照的に、上海丸は順調に
航海を続け、紀淡海峡を抜けて、熊野灘へ出た。

 現地に着けば、徒歩での移動は避けられない。まずは鋭気を養うために
も休もう、と寝床に横になった銀次郎達、神経は昂ぶっていたものの、神
戸港を出るまでの東奔西走で、三者三様で疲れていたのか、機関の振動も
何のその、寝入ってしまった。

 夜が明けた。銀次郎は東の水平線から昇った太陽をまぶしそうに見やり、
そして北へ視線を向けた。かなたに富士山が見える。
 もうすぐ三浦半島の島影が見えてくるだろう。

 横浜も相当な被害を受けている、との情報がもたらされていたので、上海
丸を横浜に寄港させて、ある程度物資を陸揚げするよう、石橋市長、滝川会
頭、銀次郎の三者で決めていた。

 陸地が近づいてきた。斜面が崩れて木々の間から崖が痛々しい有様を見せ
ているところもあった。だが、それはまだ序章に過ぎない。

横浜の町が見えてきた。
 甲板上の石橋市長、滝川会頭、銀次郎は迫ってくる横浜の町の様子を見て
愕然とした。
 威容を誇った新港埠頭の岸壁が崩れ、目印代わりの巨大な煉瓦造三階建倉
庫二棟のうち一棟は、ちょうど半分のところで瓦礫の山が出来上がっていた。

 取るものとりあえず、三井物産差し回しのはしけが上海丸の船腹に取り付
き、支援物資の揚陸作業が開始された。

 銀次郎たちは横浜の町に上陸すべく、ランチに飛び乗った。(この項つづく)


2008年8月16日(土曜日)

底抜け!痛快!!船成金の館(52)

カテゴリー: - dr-franky @ 12時24分50秒

 銀次郎は橘通の市役所へ向かう前に、商業会議所へ立ち寄った。
 会頭の滝川儀作が出迎えた。
 「神戸として救援せねばならない」。銀次郎の言に、儀作は大きく
うなづいた。「今しがた、会議所の会員に一人参萬円をめどに義捐金
を呼びかけました。」
 「じゃあ、私は市役所で市長に会った後にでも、心当たりをたずね
て回って説得してみよう」「よろしくお願いします。私も救援物資の
買出しに出かけます。それと、三井物産の川村支店長から、救援物資
輸送に船を提供する、という申し出がありました」「ありがとう。市
長にも伝える」。

 フレンチルネッサンス風の市庁舎に着くと、銀次郎は市長室へまっ
すぐ向かった。石橋市長が幹部と、義捐金の募集などについて打ち合
わせしていた。
 銀次郎は石橋市長に事の次第を伝えた。
 「物資は順番に送り込んで行きましょう。明日中には神戸を発ちま
しょう」。「わかった。三井物産、商議所にも連絡をお願いします。」

 銀次郎は、まず西は舞子、東は御影あたりまで、知己の素封家や資
本家をたずねて回って、義捐金の拠出を説いて回った。
 義捐金は、儀作は壱百萬円をめどに考えていたが、最終的には壱百
五拾萬円以上の大口義捐金が寄せられた。
 銀次郎が駆け回る一方、儀作は主だった商店街をたずねて、「在庫
品でも訳ありでも構わないので、安くで物資を提供してくれないか」
と呼びかけて回った。
 商店主たちの反応はすばやかった。瞬く間に、指定した港ちかくの
保管場所に、ステテコや浴衣といった衣料、どんぶり、鉢、箸などの
食器、長持など家財といった物資が運び込まれた。その規模、時価弐
百五拾萬円。しかし儀作の中での予算額は五拾萬円である。だが、商
店街の「大将」たちは、「人さんが困っているときにそろばん勘定な
んてでけへん」と、無償での提供を申し出ことに、儀作は胸を打たれ
只ただ頭をたれて、感謝の意を表すより他なかった。

 取り急ぎの救援船は、川村氏の手配で、上海丸と決まった。
 集積場所からはしけによって、市民の善意の品々が上海丸の船腹に
収められていった。そしてメリケン波止場から、石橋市長、商議所代
表として会頭の儀作、市会議長の銀次郎も、被災地へ向かうべく、メ
リケン波止場から上海丸へ向かうランチの人となった。
 二日おそく、物資を満載した上海丸は神戸港を出発した。
                        (この項つづく)


2008年8月4日(月曜日)

底抜け!痛快!!船成金の館(51)

カテゴリー: - dr-franky @ 00時13分16秒

 大正12年9月1日、神戸は相変わらず暑かった。

 「二百十日か」と少し頭によぎったが、銀次郎は芳夫人に見送られて
車上の人となった。
 腰高な車に揺られること二十分弱。銀次郎は旧居留地の会社に着いた。
 
 幹部会議、書類の決裁、打ち合わせなどなど雑務をこなす。合間には
頻繁に面会客もある。
 そうこうしているうちに、時計の針は正午を指そうという頃になって
いた。

 と、そのとき、銀次郎は事務所のビルが長い周期で揺れるのを感じた。
 「・・・地震かっ」揺れは1分近く続いただろうか。

 地震の揺れが収まってしばらくして、部下の一人が「東京方面への電
信電話が途絶したそうです。」と飛び込んできた。

 「どこで起こったのか」。銀次郎は神戸海洋気象台にも照会をするよ
う部下に命じた。
 夕方近くなって、秘書が銀次郎に電話を取り次いだ。「川崎造船所の
松方様です」。

 「松方さん、大きな揺れでしたが。」銀次郎が問うと
 「勝田さん、一大事だ。東京・横浜が壊滅だ」。
 一瞬、銀次郎は絶句した。

 「お父上はご無事ですか」。東京には松方の父・正義がいる。
 「いや、まだ何も伝わってこないのだ」。
 銀次郎は、この11日前、川崎造船所が、松方が独逸からもたらした
最新技術を活かして建造した最新鋭の潜水艦・第70号潜水艦が、淡路島
仮屋沖で消息を絶ち、社を挙げての懸命の捜索が続いていることを知って
いた。松方はその捜索の総責任者でもある。そこへ追い討ちをかける様な
今回の地震である。

 「とにかく、神戸として、東京方面の救援体制を立ち上げなくては」。
 銀次郎は説いた。
 「もちろんだとも。おいどんから新聞社に、義捐を募る記事を明日出す
よう話をする。」「よし、ならば行政は私が掛け合いましょう」。
 受話器を置くや否や、銀次郎は秘書に向かって叫んだ。「車だ!市役所
へ乗り込むぞ」。              (この項つづく)
         
 


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