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2008年12月31日(水曜日)

底抜け!痛快!!船成金の館(59)

カテゴリー: - dr-franky @ 23時45分00秒

 大正15年になっても、海運業界の景気は神戸港深くに突き刺さった錨
のように浮揚する気配は微塵もなかった。
 汽船会社では、過剰船腹の人員削減は一周し、残った社員達にも、給料
の遅配は日常茶飯事になりつつあり、ひどい場合は何ヶ月もただ働きか、
という事態も会社によっては起こっていた。
 勝田汽船も例外ではなかった。銀次郎の人柄を信じている社員達といえ
ども、仏の顔をも三度まで、これは・・・という状況になりつつあった。

 このとき乗り出してきたのは、日本海員組合だった。労使交渉を持とう
と組合側は申し出てきた。双方にわかにきな臭い雰囲気が出てきた。

 労使交渉の日、組合の幹部達は勝田汽船本社に乗り込み、会議室に陣取
った。汽船の社員代表らと海員組合の幹部・濱田国太郎が最前列に陣取っ
た。ここまできたら徹底抗戦、ピケだって辞さない、という気構えが一同
にみなぎった。

 どれほど時間がたっただろうか、ようやく会議室の扉が開いた。会社の
幹部が入ってくる、と皆身構えた。
 と、入ってきたのは銀次郎社長、その人であった。

 銀次郎は交渉団と向かい合った。
 「今日は、私どもとしても不退転の覚悟でこの場に臨んでいる。心して
おいていただきたい。」濱田が口火を切った。「会社としての返事を伺い
たい」。

 銀次郎は、昂ぶることなく、静かに、しかししっかりとした調子で応え
た。
「会社のため奮闘している諸君らに対する、これまでの、度重なる給料の
遅配、欠配については、ひとえに経営者である私の不徳のいたすところで
ある。お詫びしたい。」「今日は私もある覚悟をしてここへやって来た。
これまでの未払いの賃金、そして今後の当座の賃金の支払いのめどをつけ
ることが出来た。」

「おおっ」一同がどよめいた。「このあと会計担当者から、個別に未払い
分を渡す。安心されたい」
 銀次郎は一同を見渡し、そして庶務課長と入れ替わるようにして会議室
を後にした。

 その数日後、銀次郎は、あれほどまでに愛着を持っていた青谷の邸宅を
引き払い、その門前、上野通7丁目の一軒の小住宅に移った。

 これが新聞に報じられるに及んで、世間はあっと驚いた。一夜にして、
御殿住まいの今太閤から(今の基準で考えればそれなりの家だとは思うが)
わび住いに逼塞した銀次郎の「転身」ぶりに。
 銀次郎は、取引銀行の支店長に相談して、家屋敷から家財にいたるまで
抵当に入れて、社員への支払いの資金を文字通りひねり出したのだった。

 銀次郎の死後、当時のことを述懐して濱田は、銀次郎をこう評した。
 
「彼は人を愛することに徹しきった、彼の眼中には財宝も地位も名誉もな
かった。
 彼は「垢抜けのしたバカ」であった。底抜けのバカの多い世の中に、明
確な愛という根拠をもって、これに徹底したバカ振りは実に敬服のほかは
ない」(「得山翁小偲録」より)。

(ライターより年末のごあいさつ)
 連載開始から1年余り経て、生い立ちから青谷御殿へといたる銀次郎の
半生は、今日を持ってひとまず終わることとなる。ここ3ヶ月は月1回更
新となってしまい、読者の皆様にご迷惑をおかけしました。

 年明けからは、「上野通クミン」となった銀次郎の後半生を描く第2部
ともいえるセクションに移っていくことになる。皆様、どうかよろしくお
願いします。がんばって書きます。

それでは、どん詰まりですが良い年をお迎えください。

  


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