「桂 枝雀 落語大全 第八集」
「上方落語 桂枝雀爆笑コレクション〈4〉萬事気嫌よく 」
天才落語家、桂枝雀こと前田達さんは灘区中郷町のブリキ店で生まれた。
疎開を機に灘区を離れるも、彼はまた灘区に戻ってくる。
神戸大学文学部入学。
しかし、
「大学いうところがだいたい分かりました」
といって1年で灘区を去り、桂米朝師に入門。
前田さんが灘区にいたのは合計7〜8年くらいかもしれない。
でも彼の体の中には脈々と灘DNAが流れていたはずだ。
六甲山麓の明るい坂道を転げ落ちるかのような楽しげな仕種。
急斜面を流れる川のように突然あふれ出す切れ目のないまくしたて。
破天荒と言われ、賛否両論だったオーバーパフォーマンスは、
伝統の浅い港町特有の軽やかなモダンさに通じる。
定評のある酒噺は、灘の杜氏の霊が降りてきたとしか思えない。
でも、本当は控えめで照れ屋さん。
前田さんはやはり灘区が産んだ偉大な落語家、いやパフォーマー
だったんだと、あらためて思う。
奥ゆかしい前田さんが、唯一自分の出生をマクラにした噺が
今回紹介する書籍、DVDに収録されている「貧乏神」。
「ご承知であろうと思いますが、神戸市灘区中郷町2丁目3番地に、
エー、私が生まれたんでございます。
昭和14年8月13日でございますがね…」
前田さんには灘の街は、どう映っていたのだろう?
やはり買い物は八幡市場なのか、それとも地蔵市場なのか?
水道筋には行ったのだろうか?
「貧乏神」に出てくる実家の神棚の神さんはどこの神様なのか?
やはり徳井神社だったのか?
ご存命であれば是非一度いろんなことを尋ねてみたかった。
「徳井には『こぉ〜〜んな』大きなだんじりがありましたのでございます。
お祭りの日ィは、朝から『コンチキチ〜ンコンチキチ〜ン』いいましてェ、
その道中の陽気なことォ〜!」
少し照れながら、坊主頭を撫でつつ、
いつものオーバーパフォーマンスで灘噺を語ってくれたに違いない。


(継続中) - 11月23日
11月29日
