半年ぶりに出没のナダノさんノオトさん、ニセモノコンビが灘を往く。話のタネはタバコ。
成人識別カード導入が本格的に動き出すご時世にも、2人の会話は十年一日のごとく…
(重々ご承知と思いますが、本物は灘道中膝栗毛へ)
ナダノ「商店街で歩きタバコ、嫌だね〜」
ノオト「あれ、ナダノさん、タバコやめたんですか?」
ナダノ「すいませんねえ、すいますけどね」
ノオト「どっちなんですか」
ナダノ「シンナーやアヘン吸うよりゃマシだろ」
ノオト「何開き直ってるんですか。昔、教科書に載ってたでしょ、清朝時代の『アヘンを吸う人たち』。
そろそろ喫煙やめないと、野蛮な人たちとして後世の教科書に載りますよ」
ナダノ「そんなに攻めるなよ。こないだも白い服着た人たちに囲まれて、タバコやめろって迫られてさあ」
ノオト「病院で医者に注意されただけでしょ」
ナダノ「先生がさあ、またヤな言い方するんだよ。『養老孟司さんとかは禁煙ファシズムだなんて言うけど、
そういう問題じゃなく、ごくシンプルに耳鼻咽喉科的に言ってタバコの利点はゼロです』だって」
ノオト「いいじゃないですか。その通りでしょ」
ナダノ「ちげえよ。分かってるんだよ、分かっちゃいるけどやめられない、この植木等的命題をさあ…」
ノオト「ナダノさんの健康なんてどっちでもいいですけど、周りが迷惑千万なんですからね」
ナダノ「街には明と暗、光と影があるからいいんだって成田一徹さんも言ってたろ。人も同じで…」
ノオト「都合よく引用すると怒られますよ」
ナダノ「マーヴィン・ゲイだって、『聖』と『性』に引き裂かれた歌手だからいいんであって…」
ノオト「たかだかタバコやめられない悩みを、マーヴィンに置き換えないでください」
ナダノ「それにさあ、タバコ吸ってたらいいこともあるんだよ。ほら」
ノオト「何ですか、これ」
ナダノ「畑原市場のチンタで飲んでたらさ、カウンターに並んだ4人が偶然、色違いのホープ吸っててさ、
おおっ!てなったわけ。街の酒場で男たちのフォーカードだよ、粋だぁねえ」
ノオト「ちっぽけな喜びですねえ」
ナダノ「互いに肩たたき合って、酒酌み交わしてさあ。『よう兄弟、調子はどうだい』みたいな」
ノオト「あのですねえ、知ってます?水道筋はウェルネスタウンを名乗ってるんですよ」
ナダノ「ウェルネス?何すんの、それ」
ノオト「何…って、そ、それは…健康になりましょうって、さまざまな取り組みをやるんじゃないですか」
ナダノ「役所が適当な名目付けて予算消化してるだけだろ」
ノオト「またそんなことを。先日閉店した電器屋の跡は、2店舗ともドラッグストアになるみたいですしね」
ナダノ「どうせ、どっかのチェーンが草刈りに来るんだろ。いらねえよ、そんなの。
だいたい薬屋ばっかり繁盛する街の、どこが健康なんだよ。そりゃ病人ばっかりってことじゃねえか」
ノオト「…完全にヘソ曲げたよ、この人」
ナダノ「わかったよ、俺ぁそのドラッグストアでニコレット買ってやるよ、箱買いだ、箱買い」
ノオト「ついに禁煙するんですね」
ナダノ「んで、さんざ噛み終わってアゴが疲れたら、タバコで一服する」
ノオト「懲りませんねえ」
●今日の灘ノオト:Cry Me a River / Dexter Gordon
うまそうにタバコをくゆらせ、煙を吐き出すジャケが印象的な骨太テナーの充実盤。
なかでもこのスタンダード曲は、むせ返るほどの哀愁漂う叙情的名演として名高い。