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2007年8月8日(水曜日)

この家売ります

カテゴリー: - MJ @ 09時00分00秒

 Our little dream castle (ささやかな僕らの夢の城)
 with every dream gone  (でも夢は跡形もなくなった)
 is lonely and silent (ぽつんと静まり返り)
 The shades are all drawn (暗い影が落ちて)
 My heart is heavy as I gaze upon (眺めていると、心が重く沈むよ)
 A cottage for sale  (売りに出したこの家を)

角の家の様子が違っているのに気づいたのは、8月に入ってまもなくだった。
古い煉瓦塀沿いに並んで通りを飾っていた、よく手入れされた鉢植えやプランターが一掃され、
がらんと静まり返った庭に蝉時雨が降り注いでいる。敷地を取り囲む不動産屋の無粋な幟旗。
「あ、手放しはったんや……」
呆然と、しばらく眺めるうち、その歌は頭の中で鳴り始めた。
「A Cottage for Sale」
空き家の姿に、恋の終わりを重ねたジャズスタンダード。1930年に書かれた。
この歌と同じぐらいの年月を目の前の洋風建築は過ごしてきたんじゃないか、と想像してみる。
 
 The lawn we were proud of (僕らの自慢だった芝生は)
 is waving in hay (枯れ草のなかで揺れている)
 A beautiful garden has withered away (あの美しかった庭も枯れ果てた)
 Where you planted roses (きみがバラを植えた場所では)
 The weeds seem to say (雑草が言ってるようだ)
 A cottage for sale (この家売ります、って)

歌のような物語があったとは思えない。家や敷地がだれの手に渡って、どうなっていくのかも知らない。
けれど、そんな感傷を呼び起こさずにいられないほど目になじんだ、ちょっと誇らしい灘の風景だった。
連なる家々とともに、落ち着いた華やぎを作っていた園芸の小径は、
naddist氏によって「摩耶ゲバゲバフラワーロード」と名付けられた。
歳月が染み込んだ下見板張りの壁。白い木枠の観音開きの窓。生い茂る緑に覆われた山小屋風のエントランス。
建築的にどんな価値があるのかは分からないし、歴史的建造物や街並み保存を訴えて運動する気概もない。
ただ、この界隈の古くからの住まい方や、人と街との間合いを無言のうちに語ってきた、
「灘中の手」らしい風景が消えゆくことを寂しく思う。無性に。

 From every single window,I see your face (窓の一つ一つにきみの顔が見える気がする)
 But when I reach the window (でも覗いてみたら)
 There’s empty space (そこは空っぽの部屋)
 The key’s in the mailbox, the same as before (鍵は郵便受けにある。いままで通りに)
 But no one is waiting for me anymore (でも僕を待つ人はもういない)
 The end of our story is there on the door (二人の終わりをドアの張り紙が語っている)
 A cottage for sale (この家売ります)

昨日の朝、解体工事が始まった。
せめて良い買い手が付いて、この建物に住んでほしいと願っていたけど、
かなわなかった。二階の窓から畳や建具がどんどん運び出され、
玄関口には取り外された木の扉や波板ガラスの戸が無造作に置かれていた。
くすんだ煉瓦塀もいずれ取り壊されるのだろうか。
ピカピカでツルツルの新築物件が建つのだろうか。
数日間うるさいぐらいに鳴き続けた蝉時雨が、この朝はなぜか止んでいた。

●今日の灘ノオト:A Cottage for Sale / Dinah Washington

  フランク・シナトラやナット・キング・コール、ビリー・エクスタインら男性歌手で有名な歌だが、
  僕の女王様ダイナの名唄を。吾妻光良氏はこの曲を枕に「物件に出物なし」へなだれ込む。


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