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2007年6月13日(水曜日)

Jazz×Taxi

カテゴリー: - MJ @ 09時45分00秒

灘区の高台にある病院で、そのタクシーは客待ちをしていた。
外来もまばらになった昼下がり。細く開けた運転席の窓からトランペットの音が漏れてきた。
初期のマイルスだったか、フレディ・ハバードだったか。
もう記憶は薄れたが、若々しく張りのあるトーンだったように思う。
ハンドルに置いた初老の運転手の指が静かに動いていた。音に合わせてバルブを押し込むように。
もう片方の手には譜面。鉛筆書きだった。
後部座席に回って窓をコツコツやるとき、助手席に譜面がいくつも重ねてあるのが見えた。
ほんとうは、客など待っていなかったのかもしれない。
僕を乗せて走り出してからもずっと、車内には輝くようなトランペットの音が心地よく満ちていた。

15年近く前、初めて乗った「ジャズタクシー」。その病院に近い灘の会社の所属だった。
ちょうどいまごろの季節のこと。どうしてはるかなあ……と、ときどき思い出す。
Oさんといった。60歳過ぎに見えた。薄い色付きの眼鏡をかけた、クールな容貌。
だが、こちらがあれやこれやと問うのに応えて語ってくれるジャズ話は熱かった。
三宮にあった進駐軍の施設で演奏していた、という。イーストキャンプといったか。
当時のジャズマンは、ジョージ川口も、中村八大も、原信夫も、みんなキャンプ回りで腕を磨いたのだ。
ついでに言うなら、先ごろ亡くなった横山ノックも、神戸の米軍キャンプに出入りしていた。
Oさんもそこで鍛えられてプロのトランペッターになった。いくつかのバンドに所属し、いろんな所へ出掛けた。
一時肺を患い、ベースに転向したこともあったが、やっぱりトランペットがいとおしかった。
だからタクシーに乗るようになってからも、こうして譜面を手に、ヒマがあれば「練習」しているのだ、と。
僕がクリフォード・ブラウンのブリリアントな音が大好きだというと、
リー・モーガンの「I Remember Clifford」はとてもいい、と教えてくれた。
話の続きが聞きたくて、その後も2、3度乗ったが、それ以降出会うことはなかった。
Oさん、お元気でしょうか。
さすがにもうタクシーには乗ってないかもしれないけど、相変わらずトランペットを触ってはるんでしょうね。

やはり灘の、六甲あたりで何度か止めたタクシーは古い小さなモノラルのラジカセで、リー・モーガンの「The Sidewinder」あたりを流していた。ソウルフルなテーマに乗って、タクシーは坂道を滑り下りていった。
灘ではないけれど、ほかにも何台か神戸でジャズタクシーに乗り合わせた。よその街では見たこともないのに。
ギタリストで、非番の日はリハーサルとライヴに明け暮れていたDタクシーのMさん。「いつかニューヨークに住むんや」と夢見ていた。
一度だけ乗った個人タクシーは、豪華なオーディオを設え、トランクに満載のCDを聴かせてくれた。目的地までの途上、路肩に停めてライブラリー自慢を聞かされたっけ。
「日本のジャズ発祥の地」なんて看板を掲げて観光用の「ジャズ」を垂れ流すよりも、
こんな趣味人やカッコいい大人がたくさんいることのほうが、ずっと音楽が生きているし、街っぽい話だと思うのだ。

●今日の灘ノオト:I Remember Clifford / Lee Morgan

  25歳で事故死した天才トランペッターを追慕する美しいバラード。
  Oさんお勧めのこの演奏は名演の誉れ高い。カッコええ動画付き。




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